ブランクのある薬剤師が賢く転職する方法
結婚・妊娠・出産や子育てなど、女性には仕事を辞める転機となるライフイベントがたくさんあります。女性薬剤師はこのようなタイミングで職を離れる人がたくさんいますが、一定期間を得て復職したいと考える人は多いようです。
また、男性の中には一般企業や製薬関連企業に転職したものの、「やはり薬剤師として薬局勤務に戻りたい」というケースがよくあります。
薬剤師の場合には、一度現場を離れたとしても、薬剤師資格は一生ものですので、復職・転職は比較的容易にできます。しかし、現場復帰を考えたときに不安になるのが、仕事をしていない期間の「ブランク」ではないでしょうか。
ここでは、ブランクがある薬剤師が、「安心して仕事に復帰する」「賢く転職する」方法について解説します。「そろそろ働きたいな…」と考えている薬剤師の方は参考にしてください。
・薬剤師はブランクがあっても転職できる
・ブランクがある薬剤師の雇用形態の選び方
・ブランクがある薬剤師の職場の選び方
・ブランクがある薬剤師が転職活動で注意すべきこと
・転職前に準備すること
・転職サイトを活用メリットは大きい
〈目次〉
・薬剤師とブランクの関係
・ブランクがあっても薬剤師資格があれば転職は可能?
・転職目的と雇用形態の選び方
正社員
パート
派遣
・ブランクがある薬剤師と職場選びの注意点
調剤薬局
ドラッグストア
病院
・ブランクがある薬剤師が転職を成功させるために準備すること
・独学で学ぶ
書籍による学習
雑誌による学習
ネットによる学習
・研修会への参加、通信講座を受ける
日本女性薬剤師会
日本薬剤師研修センター
・転職サイトに登録する
・まとめ
■薬剤師とブランクの関係
産休や育休の取得推進により、女性が仕事を継続しやすい社会に徐々に変わりつつありますが、それでも、まだまだ女性は家庭の都合により、キャリアを中断するケースが大半です。
薬剤師においても、それは例外ではなく、結婚・出産・親の介護などを機に仕事を辞めてしまう女性薬剤師はたくさんいます。しかし、以下のような事情から一定のブランクを経て、職場復帰をする女性薬剤師はたくさんいます。
・育児が落ち着いたので仕事をしたい
・家計収入をアップしたい
・親の介護が落ち着いたので働きたい
・離婚したので仕事に戻りたい
・社会参加したい
■ブランクがあっても薬剤師資格があれば転職は可能?
ブランクからの復帰が珍しくない薬剤師とはいえ、いざ復帰するとなると「転職できるかな…」「仕事についていけるかな…」と不安になるものです。
薬剤師の仕事は、現場から数年離れるだけで、薬事法改正、新薬発売により「新しいこと」「知らないこと」が増えるからです。しかし、ブランクがあっても転職は可能です。
医療の現場では、まだまだ薬剤師は不足しており、転職に有利な売り手市場が続いています。「ブランクがあってもOK」という求人は多く、正社員募集だけでなくパート・派遣という、ブランク明けの薬剤師にとって働きやすい求人もたくさん出ています。
薬剤師の資格は喪失することはなく、「現場で働いた経験」「学んだ知識」は消えることはないので、新しい情報は少しずつ取り入れていけば問題ありません。仮に「10~20年という長いブランク」があったとしても、本人のやる気次第では現場に復帰することは可能です。
■転職目的と雇用形態の選び方
復職と言っても、正社員としてフルタイムで働きたい人もいれば、パート・派遣のように週に数時間からスタートしたい方もいると思います。
ブランク明けからの復帰を目指すならば、まずは「希望収入」「労働時間」「キャリアプラン」などの転職目的を考えてみることです。その上で自分に合う雇用形態を選択することが大切です。
それぞれの薬剤師の雇用形態のメリットとデメリットをご紹介します。
●正社員
復帰してフルタイムでバリバリと働きたいならば正社員という選択になります。正社員として転職するならば、収入アップ、キャリアップが期待できます。一方で会社との直接の雇用契約になるため、会社への貢献が求められます。
職場によっては、残業、休日出勤、異動など自己犠牲が必要なシーンもでてくるかもしれません。フルタイムの勤務によって、家庭にも負担がかかりやすくなりますので、ご自身が描くライフプランによって慎重に考える必要があります。
■メリット
・収入が安定する
・同一の職場で長く働くことができる
・薬局長や管理薬剤師への、キャリアアップ・収入アップも可能
■デメリット
・残業・土日出勤・場合によっては異動もあり、家庭に負担がかかる
・パート・派遣に比べて仕事量が多くなる
正社員への復帰は、ブランク期間ができるだけ短い方が有利です。いつか正社員として働きたいと考えるならば、早めに決断することも大切です。
●パート
パートは会社との直接雇用契約になりますが、職場と相談の上、週2日~短時間での勤務が可能です。ブランクがあって「復帰後すぐにバリバリと働くのは不安…」「自宅近くの薬局で決まった時間だけ働きたい…」というような方に向いています。
一方で同じ短時間勤務でも派遣に比べて時給は低い傾向になりますので、大きく収入をアップしたいという方には不向きです。また、同一職場で長く勤務する場合には、同じ診療科処方せんしか経験できないため、スキルアップは難しくなります。
■メリット
・週2~3日・3~4時間など、自身の都合に合わせて働くことができる
・異動がないので、同じ職場で長く働ける
■デメリット
・正社員・派遣よりも職種よりも収入は少なくなる
・スキルアップ・キャリアアップは難しい
●派遣社員
派遣社員は派遣会社と雇用契約を結んで、派遣先の薬局で働くというシステムです。希望の勤務日数・時間をあらかじめ派遣会社に伝えておけば、その条件に合う職場を紹介してくれます。
派遣はパートに比べて時給が高いのが特徴ですので、自分のライフスタイルに合わせて、同時に収入アップも達成したいという方にはオススメの働き方です。いろんな職場でたくさんの薬を扱うことができるので薬剤師としての成長も期待できます。
ただし派遣の契約は半年から1年という求人が多いため、職場を変わるたびに処方内容や内規を覚えなくてはならないという大変さもあります。
■メリット
・時給が高い、短時間でもたくさん稼げる
・色々な職場で働けるので、薬剤師としてスキルアップできる
■デメリット
・条件の良い職場でも、契約期間が終わったら働けない
・職場が変わるたびに新しいことを覚える必要がある
■ブランクがある薬剤師と職場選びの注意点
働き方のスタイルを決めたら、次に決めるのは職場です。「ブランクあり薬剤師」の受け皿はそれなりにありますが、自分にも周りにも負担をかけずに働ける職場を選ぶのが、無理なく仕事を続けるポイントです。
今までの経験や知識を活かせるのはどこか、これからどんな薬剤師になりたいのかを考え、職場を選ぶと良いでしょう。
●調剤薬局
高齢化社会により、出店数数が増えている調剤薬局では薬剤師不足が続いています。そのため、休職中の薬剤師でも働ける「未経験・ブランクありOK」という求人はたくさんあります。
ブランク前は「病院」「ドラッグストア」で働いていたというように、調剤薬局での勤務経験が無い方でも、仕事の内容は固定しているため、比較的馴染みやすい職場と言えます。
ただし、職場によっては患者が絶えずに忙しい職場もあり、新人に「教える」「フォローする」時間が無いという職場もあります。転職時には、ブランクのある薬剤師を受け入れる体制があるかどうかをチェックして、職場を決めることが大切です。
大企業のチェーン薬局の中には中途採用者向けの研修を用意している企業もあります。すぐに職場にフィットするか不安な方は、就職前に職場の研修制度について調べておきたいところです。
【調剤薬局の主な仕事内容】
・処方せん監査・調剤
・服薬指導
・薬歴記録
●ドラッグストア
ドラッグストアも出店は増えており、薬剤師の需要は高いです。そのため「ブランクありの薬剤師もOK」という募集を出しているドラッグストアはたくさんあります。
ドラッグストは薬剤師1人という職場もあるため、ブランクのある薬剤師にとっては、そのような職場は難易度が高いかもしれません。慣れるまで「先輩薬剤師と一緒に働ける職場を選ぶ」「調剤併設店のような薬剤師がいる職場を選ぶ」というように、OTCの知識に不安がある人は、職場選びは慎重におこなう必要があります。
第一類医薬品の数はそれほど多くないので、規模の大きくないドラッグストならサポートを受けなくても自己学習により問題なく働けることもあります。
【ドラッグストアの主な仕事内容】
・OTCの説明・販売
・お客様の案内やレジ打ち
・品出しや商品の管理
※調剤併設店であれば、調剤薬局の業務もおこなう可能性があります。
●病院
病院は調剤薬局やドラッグストアに比べて、未経験者やブランクありの薬剤師の募集は少ない傾向です。「少ない薬剤師」「1人薬剤師」で業務をおこなっている病院が多く、即戦力を求められることが多いためです。
病院は調剤薬局・ドラッグストアに比べて、一般的に給料・時給は低くなります。病院勤務は、経験が積めるということで、薬剤師の転職先として人気ですが、給料に不満を持つ人は少なくありません。希望の収入と求人条件が合うかについても事前に検討する必要があります。
【病院の主な仕事内容】
・処方せん調剤(内服・注射など)
・入院患者・外来患者への服薬指導
・カンファレンスへの参加・DI対応
■ブランクがある薬剤師が転職を成功させるために準備すること
これまでご説明したようにブランクがあっても薬剤師は転職可能です。ただし、すぐに仕事にフィットしていくためには、空いた年数分の穴を埋めるために、事前に「知識習得」をして、復帰後に苦労することなく働けるようにしておきたいものです。
ブランクによる不安がある方は、ここでご紹介する学習方法を活用して、自信を持って仕事を再開できるようにしましょう。
■独学で学ぶ
ネット、書籍、雑誌などを使って自分だけで学習をするスタイルです。独学による知識の習得はいつでもどこでもできるので、育児や家事などで、なかなか時間が取れない方にも向いています。
●書籍による学習
書籍選びでは、薬剤師の仕事を1から復習するつもりで、新人向けの簡単なものから読み進めることがオススメです。特に服薬指導に特化した内容のものは、薬効薬理・副作用・疾患についての情報がまとめられているので読んでおきたいものです。
例えば、以下のような内容が書かれた書籍はオススメです。
・服薬指導の基礎が書かれた本
・小児向けの服薬指導の本
・薬効が分類された服薬指導の本
・薬の聞き方や副作用について書かれた本
・漢方の服薬指導の本
いきなりネットで購入するよりも、まずは自身で手にとってみて「服薬指導」というタイトルが付いた本をくまなく調べて、自分に合う書籍を選ぶのが良いでしょう。
●雑誌による学習
日経DIなど薬剤師向けの雑誌は、病院や調剤薬局に置いてあることも多く、目にした方もいるのではないでしょうか。このような業界紙は、新薬情報や法改正などのトレンド情報もしっかり説明されているので参考になります。
4月頃の記事には、診療報酬改定のポイントが書かれていますので、転職前に確認しておきたいものです。図書館にはバックナンバーが保管されていることもありますので、自宅近くの図書館に行ってチェックしてみるのも良いでしょう。
●インターネットによる学習
復帰前にインターネットで情報を収集するのも大切です。Q&Aサイトや医療系の掲示板には薬剤師の転職・復帰などについても活発に議論されているサイトもあります。
また、医療系の大手メディアも参考になります。前述した日経DIにはインターネットサイトも存在し、新薬や服薬指導のコツ・診療報酬関連まで充実した記事を無料で読むことができます。ファーマトリビューンなどは、「国内や海外の論文」「学会情報」「医薬品情報」が紹介されています。
ただし、WEBサイトの中には正しい情報が書かれていないような個人サイトもありますので、製薬会社・薬剤師会・医師会など信頼できるサイトを参考にするのが間違いありません。
また、薬効薬理など基礎から学習するなら、eラーニングシステムもオススメです。録画された映像をPCやスマホからも閲覧することができて、疾患や薬についての授業を受けることができます。
■研修会への参加、通信講座を受ける
基礎から応用までをしっかり学びたいという方は研修会への参加・通信講座の受講が良いでしょう。各団体が全国各地で研修会をおこなっています。
●日本女性薬剤師会
日本女性薬剤師会では、薬剤師の継続学習を目的に通信教育講座(スクーリング含む)を開催しています。そこでは1年を通じ、がん・精神疾患・肥満症など幅広い領域について詳しく学べます。研修認定薬剤師の単位を最大15単位が取得可能です。
基本から学びなおしたい方や知りたい領域が限られている方には不向きかもしれませんが、同会では、全国で研修会・講習会も開催しており、自分が学びたい分野にしぼってしっかり学習することができます。
一般社団法人日本女性薬剤師会
●日本薬剤師研修センター
日本薬剤師研修センターでは、セミナー研修、eラーニング、書籍、DVDなどにより、さまざまな分野の学習が可能です。例えば、漢方薬・生薬認定薬剤師や小児薬物療法認定薬剤師などの認定に必要な研修も開催しています。漢方薬局や小児科門前へ勤務予定の方は研修だけでも受けてみるのもオススメです。
また、各地でおこなわれる研修会も、現場で働く薬剤師に向けた実践的な内容になっているため役立ちます。
公益財団法人日本薬剤師研修センター
調剤未経験者サポートプログラム
当サイト「薬スタ」の運営母体である、マツモトキヨシホールディングスでは、「調剤未経験者」「調剤以外の従事者」「ブランクのある薬剤師」向けに研修を開催しています。
17日間の充実した研修ですので、調剤を今一度しっかり学びたい方にはオススメです。薬スタに登録すれば研修費用10万円が半額です。しかも転職が成約すれば無料ですので、ぜひご活用下さい。
【参考】:調剤未経験者サポートプログラム
■転職サイトに登録する
転職サイトに登録して、コンサルタントに「希望する条件」「ブランクあり」ということを伝えておけば、条件に合う求人を紹介してくれます。転職コンサルタントは、薬局と求職者のマッチングが仕事ですが、そこではお互いのミスマッチが発生しないように、求職者に寄り添い、手厚くサポートしてくれます。
今すぐ転職するわけではなくても早めに登録して、コンサルタントと話しをするだけでも、「転職活動前にやるべきこと」「どのような雇用形態が向いているか」「どのような職場が向いているか」などが明確になることでしょう。
ブランクがある薬剤師は、転職前に悩み・不安がつきないものですが、コンサルタントが的確にアドバイスしてくれますので、安心して仕事探しができます。登録や相談は無料なので利用価値は高いと言えるでしょう。
■まとめ
ブランクがある薬剤師にとって、「仕事に上手く復帰できるか」「良い職場に巡り会えるか」というのは非常に重要な問題です。ブランク期間が長くなればなるほど、心配は大きくなります。
しかし、この記事でご説明したようにブランクがあっても薬剤師の求人数は多いので、さほど心配することはありません。ただし、ご自身の条件に合う職場を探すならば、そこは自分だけで探すよりもプロに相談するのが有効です。薬スタは薬局業界専門の転職サイトです。
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