英語ができる薬剤師は何が有利?就職、求人、勉強について解説
薬剤師のスキルアップ方法はいろいろありますが「英語」もその一つです。 国際化が進む日本において、英語ができる薬剤師は、これから必要とされる人材だからです。
今は英語の必要性をさほど感じていない薬剤師の方は多いかもしれませんが、これからは英語ができることにより業務範囲が広がるとともに、「スキルアップ」「収入アップ」ができる可能性は高くなります。
英語ができる薬剤師は何が有利なのか?就職や求人事情、さらには英語勉強法まで解説します。
・薬剤師の英語の必要性
・英語ができる薬剤師は何が有利になるか
・英語ができると給料は上がるのか
・英語ができる薬剤師の求人
・英語の効果的な勉強方法
<目次>
・薬剤師に英語は必要?
・英語ができる薬剤師のメリット
外国人のお客さんに英語で接客できる
英語の薬種情報、新薬情報が分かる
就職・転職のチャンスが広がる
・薬局勤務は英語ができると給料はアップする?
・英語ができる薬剤師の求人とは?
空港薬局
大都市圏、観光地、大使館の近くの薬局
総合病院の門前薬局
外資系製薬会社
CRO(受託臨床試験機構)
・薬剤師の英語勉強法
薬剤師の仕事に役立つ英会話
英語サイトを活用する
TOEICは必要?
本気で英語を勉強するなら派遣・パートで働く
・まとめ
■薬剤師に英語は必要?
薬局で働く薬剤師の仕事は、これまでは英語力を要求される機会はさほどありませんでした。しかし、それは徐々に変わりつつあります。背景には、日本への外国人観光客の増加(インバウンド)や移住者の増加があげられます。
日本政府観光局 (JNTO) 発表の訪日外国人数によると、2010年は約860万人でしたが、2017年は約2870万人と3倍以上に増加しています。また、平成30年の総務省発表によると、日本に住む外国人住民は249万7,656人で、前年比7.5%と大きく伸びています。このデータからも分かるように、ドラッグストアや調剤薬局を訪れる外国人は、今後ますます増えることが予想されます。
すべての外国人が英語を話すわけではありませんが、日本語がしゃべれない外国人の多くは英語でコミュニケーションを取ろうとします。薬局に来店した外国人に「薬の説明をする」「服薬指導をする」という機会が増えるのは間違いありません。薬剤師は仕事をする中で、英語を話さなくてはならない場面は確実にやってきます。
そのため外国人客を接客できる薬剤師は貴重な人材として扱われることでしょう。英語ができることにより「収入アップ」や「好条件の転職」のチャンスも期待できます。
■英語ができる薬剤師のメリット
薬剤師は「英語が話せる」「読める」ことによってどのようなメリットがあるのでしょうか?
●外国人のお客さんに英語で接客できる
英語が話せることで薬局に来店した外国人客に直接接客できるというメリットがあります。国内のドラッグストアは品揃えが充実しており、海外には売っていない医薬品も多いため、多くの外国人観光客が来店します。
外国人客の中には、ケガや病気でドラッグストアを訪れたものの、日本語で書かれた医薬品が何の薬なのか分からないため、購入しないというケースが考えられます。そんな時に薬剤師が英語で丁寧に商品説明をすれば、お客さんは安心して買ってくれます。英語ができる薬剤師が店舗内にいることにより販売機会の損失は減少します。
これは調剤薬局にも同じことが言えます。例えば、近隣に複数の調剤薬局があった場合には、外国人客は安心感を考えて、英語が話せる薬剤師がいる店舗を選ぶでしょう。外国人客から信頼されれば、口コミにより多くの外国人がお客さんになってくれる可能性があります。英語ができる薬剤師が調剤薬局にいることでお店の売上げアップにつながります。
ドラッグストア、調剤薬局のいずれも、お客さんを呼べる薬剤師は薬局内での評価は高くなることでしょう。
●英語の薬種情報、新薬情報が分かる
最新の医薬情報や学術論文は、まず初めに英文の雑誌・WEBサイトで公開されるケースが一般的です。英文が読めれば、これらの最新情報に直に触れることができるメリットがあります。
医薬の世界は今や国境がありませんので、最新の医療情報は世界の共通言語である英語で情報が行き交います。最新の論文などは学術雑誌に英文で公表されることが多いですが、それらの論文が日本語訳として編集・公開されるまでには数か月以上も後になることがあります。
そもそも医薬情報や学術論文を日本語で公開している媒体は少なく、しかも、重要な論文が必ずしも日本語に訳されるわけではありません。また、翻訳された記事には専門家の「査読」というチェックが入っていないこともあるため、原文とはやや異なる内容が掲載されてしまうことがあります。
最新の医薬情報を研究する薬剤師ならば、英語の原文をそのまま読めることによるメリットは計り知れません。
●就職・転職のチャンスが広がる
2016年の厚生労働省の調査によると、全国の「届出薬剤師数」は約30万人(男性:12万人,女性18万人)です。英語ができる薬剤師の数を示すデータはありませんが、実用レベルで使える人はおそらく数%にも満たないと考えられます。
「薬を購入する外国人客の増加」「医薬情報のボーダレス化」という国際化の進展により、英語ができる薬剤師のニーズは年々高くなっていくと考えられます。しかし、実際に英語を使いこなせる薬剤師は多くないため、英語スキルがあれば、今後は就職・転職のチャンスが広がることが予想されます。
実際に薬剤師の就職先は薬局だけではなく、製薬会社、薬剤卸会社、SMO(治験)、DI(ドラッグインフォメーション)、CRO(受託臨床試験実施機関)など、就業できる領域は広がっています。これらの企業は薬局に比べて全体的に高待遇なのが特徴です。「活躍の場を広げたい」「年収をアップしたい」という薬剤師には様々なチャンスがあります。
■薬局勤務は英語ができると給料はアップする?
ドラッグストア、調剤薬局、病院のお仕事は、現時点では英語のスキルがあっても、すぐに給料アップにはつながらないケースがほとんどです。これは英語ができる薬剤師が薬局内にいることにより、売上が大きく増えるという実感があまりないためでしょうか。
しかし、働く場所・職場を選べば給料アップは期待できます。例えば、空港や観光地、外国人居住エリアなどには英語ができる薬剤師を積極的に募集しています。
そのような職場ならば「ご自身の英語スキル」を給料アップの交渉手段として用いることはできます。さらには、外国人客からの指名が増えれば、実績として評価されるでしょう。
■英語ができる薬剤師の求人とは?
英語ができると転職に有利、待遇アップも期待ができることは分かりましたが、具体的にどのような求人があるのかを見ていきましょう。
●空港薬局
全国の空港には、毎日多くの訪日外国人が訪れます。そこにある空港内の薬局には、日本の医薬品や化粧品を買い求める外国人客で賑わっています。また、体調が悪くなった外国人は空港内の調剤薬局を利用します。
すでに大手ドラッグストアや調剤薬局グループは、空港に薬局を出店して外国人観光客への販売に力を入れています。そこでは、常に薬剤師を募集しています。
空港の薬剤師求人の多くに「英語が活かせる仕事」と記載されています。英語スキルは必須条件ではありませんが、英語力が歓迎されるのは間違いありません。現在は、さほど英語力はない人でも、外国人客と毎日話す機会が多いため、英会話スキルをアップすることができます。
●大都市圏、観光地、大使館の近くの薬局
東京を始めとする大都市圏、観光地、大使館周辺、外国人居住地域の薬局には多くの外国人客が来店します。このような場所にある薬局で働くことで、薬剤指導を通じて外国人客と親密なコミュニケーションを形成することができます。
接客を気に入ってもらえばリピーターになってくれるでしょう。外国人のお客さんとの会話を通して国際感覚とともに英語力を身に付けることができます。
●総合病院の門前薬局
総合病院には毎日多くの患者が診察のために来院しますが、そこには日本に住む外国人や観光客も含まれます。総合病院の近くには必ず門前薬局がありますが、それらの薬局の求人には「英語が活かせる職場」という募集内容がよくあります。
外国人が多いエリアの門前薬局勤務は、薬剤師としての経験が積めるだけでなく、英語スキルを活かすこともできます。そのため、英語力が給与や時給に反映されることも期待できます。
●外資系製薬会社
外資系製薬会社の中には、他国での医薬品の承認申請を積極的に進めてシェアの拡大を図っている企業があります。そのような製薬会社は薬剤師経験者を募集していますが、「研究職」「開発職」「DI職(ドラッグインフォメーション)」「MR(医薬情報担当者)」が主な職種です。「研究職」「開発職」は医療、医薬品に関する高い専門知識と経験が必要になるため狭き門となっています。
DIは、医者、薬剤師、MRからの薬に関する質問に対して、適切に情報を提供するのが仕事です。英語力を必要とするシーンも多いため、会社によっては高い英語力を求められることがあります。TOEICなどの英語検定試験で高いスコアを獲得することが有利な転職につながります。
また、薬剤師からMRという営業職に転職する人も少なからずいます。外資系製薬会社のMRの仕事ならば、薬剤師経験や英語スキルが活かせます。営業成績次第では、年収1000万円以上という高収入が期待できる職種でもあります。
●CRO(受託臨床試験機構)
CRO(受託臨床試験機構)という、医薬品の開発や治験をおこない製薬会社をサポートする業態があります。製薬会社は、新薬開発を自社だけでおこなうには限界があるため、積極的に外部リソースを活用しています。そこで開発治験を支援しているのがCROです。
日本には約30社以上のCROがありますが、この中には製薬会社からの受託業務が増えている会社はたくさんあります。そのため、臨床開発経験者や医療従事者を積極的に募集しています。その中でも薬剤師経験者は転職に有利になりますが、さらに英語力があれば、外資系製薬会社に対応できるため重用されます。
外資系製薬企業と新しい医薬品を開発する会社の求人は今後も増加していくことが予想されますので、英語ができる薬剤師経験者の活躍の場はますます広がるでしょう。
■薬剤師の英語勉強法
薬剤師の英語勉強法は、その目的によって異なります。接客を中心にスキルアップしたい場合には、聞く・話すという英会話が中心になります。英語文献を読むのが目的ならば、文法と単語学習が中心になるでしょう。
また、外資系の製薬会社やCROとして働きたいならばTOEICのハイスコアが必須になります。薬剤師に必要な英語勉強法を説明します。
●薬剤師の仕事に役立つ英会話
薬局勤務の薬剤師が英語を活用するシーンは、外国人客への薬の説明と服薬指導です。主には話すことが中心になりますので、よくある会話のシチュエーションをイメージして、病名、病状、薬名などの医療用語を徹底して暗記することが大切です。
話せるようになるためには、まずは“接客でよく使う例文”をたくさん覚えることから始めるのが効率的です。そのうえで、服薬指導に必要な単語を加えて、それを口に出して毎日しゃべってみることです。「Take one tablet three times a day after every meal. (1日3回食後に1錠ずつ飲んでください。)」のような例文を繰り返し口に出してみましょう。
また、発音が悪いとネイティブスピーカーには伝わらないことがあります。誤って伝わることで服薬を間違えるケースが考えられますので、音声を活用した英語学習ツールを使うなど発音の学習も必要です。
英会話で最も効果的な学習法は、実際に外国人と話すことですので、思いきって空港、外国人居住区の薬局に「転職する」「異動を願い出る」というのも一つの方法です。
●英語サイトを活用する
薬剤師が「医薬・医療の専門知識を磨きたい」「英語の読解力を伸ばしたい」という2つの目的がある場合には、医療や薬剤の情報が掲載されている英語サイトを閲覧するのが効率的です。有名な医療情報サイトを3つご紹介します。
●The Cochrane Library(コクランライブラリー)
1,992年に英国で発足した「コクラン共同計画」という医療評価プロジェクトです。臨床試験に関する各種レビューのデータベースを参照することができます。EBM(Evidence-Based Medicine)の情報が網羅されています。
●Clinical Evidence(クリニカル・エビデンス)
BMJ Publishing Group(英国医師会出版部門)が発行するクリニカルエビデンス「clinical evidence」。書籍・WEBサイトは世界中の医療従事者が利用しています。(書籍は日本語版もあり)医薬品情報も投与、有効性、副作用など詳細な情報にアクセスできます。
ACPジャーナルクラブは、1991年にAmerican College of Physicianから発刊されて1995年からは隔月の雑誌として発行されています。最新の医療文献がWEB上からも有料購読できます。
●TOEICは必要?
日本国内の代表的な英語能力試験には、TOEICとTOEFLと英検の3つがあります。TOEFLはアメリカの教育試験サービスが主催する英語試験で、アメリカの大学など高等教育機関への留学する際によく用いられますのでビジネス検定としてはあまり馴染みがありません。
英検は日本英語検定協会が実施するドメスティックな英語能力検定試験ですので、グローバルなビジネスの場では、あまり認めてもらえません。
自身の英語スキルをビジネスの場で証明するならば、やはり「TOEIC」です。外資系製薬会社への転職、CROへの転職を考えた場合には、TOEICでハイスコアを獲得したいところです。
まずは800点以上のスコア獲得を目指して英語学習に取り組むとよいでしょう。英語の基礎能力を固めた上で、医療用語のボキャブラリーを増やしていくことにより、英語力を武器に良い転職が期待できます。
●本気で英語を勉強するなら派遣・パートで働く
英語学習には、「独学」「英会話教室」「留学」の3つの勉強方法が考えられます。薬剤師として仕事を続けながら英語学習をするならば「留学」という選択肢はありませんので、独学か英会話スクールを活用することになりますが、いずれも一定の学習時間が必要です。
日々の仕事が忙しい薬剤師が英語学習の時間を確保するのは簡単ではありません。ですので、徹底して英語学習に取り組むならば、正社員勤務を辞めて派遣やパートに転職して短時間勤務にするという考え方があります。
薬局の多くは薬剤師が不足していますので、パートや派遣薬剤師の求人はたくさんあります。しかも、時給も高いため派遣やパート勤務でも生活に十分な収入確保は可能です。
英語のスキルアップに本気で取り組むために、派遣やパートで働きながら英語学習に取り組むという方法も選択としてはありではないでしょうか。
■まとめ
英語ができる薬剤師のメリットは、「外国人客を英語で接客できる」「新しい医薬情報をいち早く情報収集できる」「国際的な医療人として成長できる」というメリットがあります。英語ができることにより、これから薬剤師としての活躍の場が広がるのは間違いありません。
しかしながら、英語スキルは一朝一夕に身につくものではありません。日々の学習の積み重ねが何よりも大切ですが、自ら英語が活かせる職場(薬局)で働いてみるのも一つの方法です。
そんな時には、たくさんの薬局情報を持っているエージェントに相談するのが良いでしょう。きっと、希望する条件の求人を紹介してくれます。
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