オンライン診療の「画面越しの診察」が変える、医療の距離と薬剤師の未来
コロナ禍を機に一気に普及したオンライン診療は、私たちの医療との関わり方を大きく変えました。自宅にいながら専門医の診察を受けられる利便性は、移動の負担や待ち時間の削減といった恩恵をもたらし、医療へのアクセスを格段に向上させました。しかし、医療の現場では、いまだ対面でのやり取りが欠かせない場面が多く存在します。
画面越しでの診察は、従来の対面診療とは異なる「距離感」を生み出します。モニター越しでは、医師は患者の全体的な雰囲気や細かな表情の変化、声のトーンから得られる非言語情報を読み取りにくくなります。通信環境ですら診療の質に関わってきてしまいます。患者側もまた、医師の診察室の空気感や、直接触れてもらうことで得られる安心感を抱きにくいかもしれません。
そこで薬剤師としての役割が重要になってきます。診察はオンラインで受けていても薬の受け取りは対面で、ということは多くあります。それはなぜか。一つは薬局でもオンラインでの対応となると薬が郵送となりすぐに服用できないという面が大きいからでしょう。二つ目は悩みや不安を直接相談したいという思いを抱えている場合です。
こういったことから医師の診察をオンラインで行っている方こそ薬剤師が一番身近に頼れる存在となるのです。医師に伝えきれなかったこと、対面だからこそ感じ取れる情報を取りこぼさずその人に合った治 療を共に考えていくことが、オンライン化が進んでいく世の中で生き残る薬剤師に必要なことでしょう。
もちろん、オンライン診療が提供する利便性は計り知れません。しかし、私たちはこの新しい形態の医療が、従来の「手と手を取り合う」ような人間らしい医療の温かさを失わせないよう、そのあり方を常に問い続ける必要があります。画面越しであっても、相手の背景にある生活や感情に想像力を働かせ、いかに「心」を通わせるかが、これからの医療における大切な課題となるはずです。