お薬手帳から読み解く、患者の個性
薬局で薬を受け取る際に提示していただくお薬手帳。多くの人は無意識に使っているアイテムかもしれません。しかし、一つの手帳から持ち主である患者さんの個性や暮らしの断片が垣間見えることがあります。
薬剤師に差し出されるお薬手帳は実に様々です。薬局にて無料で配布される無機質なものから、キャラクターがデザインされた可愛らしいもの、色鮮やかな花柄、あるいはシンプルな革製のカバーを付けたものまで。中には、手作りの手帳や、子どもが描いた絵を挟んだものを見かけることもあるでしょう。そういった手帳から読み取った個性を投薬に生かすことも可能です。
例えば、シンプルで落ち着いた色の手帳は、実用性を重視する方や、持ち物を厳選している方のように思えます。その場合は雑談をあまり挟まず、重要な情報をピックアップし伝えることが効果的と考えられます。
使い込まれて少しくたびれたカバーは、長年にわたって様々な医療機関を受診してきた歴史を、家族の写真などを挟んだカバーは、その人にとって何が大切かを物語っています。大切と感じているものに興味を示してあげると、ひょんなことから重要な情報を得られることがあります。
しかし、中には深く触れられたくない人もいます。そこが対人業務の難しい部分ですが、言い換えるとやりがいとも感じられるでしょう。
お薬手帳は、単に薬の情報を記録するツールだけでなく、患者さん自身の健康への向き合い方や、日々の生活に彩りを与えるささやかな工夫、さらには人柄までもを映し出す鏡と言えるでしょう。
薬局でのやり取りの中で、お薬手帳は、患者さん一人ひとりの「個性」を静かに語りかけているのです。
薬剤師にとっては数ある手帳のうちの一つに感じるかもしれないが、患者さんにとっては唯一の手帳です。薬剤師としての安心感や信頼を得るきっかけとして一歩踏み込んでみてはいかがでしょうか。