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【薬剤師版】苦手な人との付き合い方/解決策その② 実践的アプローチ

前回、「苦手な人は変わらないが、自分の捉え方・考え方は変えられる」を前提とする心理的アプローチをお伝えしました。
実際に、薬剤師として「接客時」「職場内」で苦手な人とどう付き合えばよいか、実践的アプローチについてお話したいと思います。
 

■実践的アプローチ前の心構え:『コミュニケーションの主導権は自分が握る』

「苦手だな」と思った時点で、その人の一挙手一投足が気になります。これは、苦手意識から相手に囚われてしまって、つまるところ苦手な人にコミュニケーションの主導権を握られた状態といえます。苦手な相手に振り回されっぱなしでは、気分良く働けるわけがありません。
そこで「コミュニケーションの主導権は自分が握る」と強く意識して、「苦手な人への実践的アプローチ」は積極的に行う事をお勧めします。

① 自分から挨拶する

挨拶はコミュニケーションの基本です。しかし、職場内の苦手な人には、あなたを無視する人もいるでしょう。けれども「この人はいつも挨拶しないから、自分も挨拶しない。でも局内の雰囲気も悪くなるし、周りにどう思われるかな」と悶々としてしまうのは、実は苦手な人にコミュニケーションの主導権を握られているのです。それはあなたのためになりません。相手の対応は放っておいて、「挨拶は基本だから、どの人にもきちんとする」という姿勢を崩さないようにしましょう。局内の雰囲気も悪くなりませんし、周囲にも挨拶する方が礼儀にかなっている印象を与えます。自分から迷うことなく、苦手な相手にも挨拶することをお勧めします。
ただ、顔を合わせての挨拶が難しい場合は、その人のいる方に何となしに挨拶する、または後ろから挨拶するのでも構いません。それだけでも、悶々とする必要がなくなり、あなた自身の心理的負担が小さくなります。

② 必要以上にダメージを受けない

例えば、「こちらを貶める非難や嫌味を言う同僚」の場合、「強い劣等感により、相手を引き下げて自分の優位を確保したい」という引き下げの心理があると考えられます。
その場合、いわれのない非難や嫌味は「そっけなく受け流す」とよいでしょう。
必要以上にこちらがダメージを受けてしまうと、まんまとこちらも相手の引き下げに乗ってしまい、さらに職場内の雰囲気が悪くなるという悪循環に陥ります。
ただし、その嫌味に思い当たる真実が少しでも含まれている場合は、謙虚に受け取り、改善する努力をしましょう。
考え方を変えてみると、この人には「相手を引き下げなくても承認欲求が得られるのだ」と思ってもらえれば良いのです。
筆者の体験ですが、相手の話を聞いて、納得のいく事やためになる事があったら「〇〇さんの話がためになりました」と素直に伝えてみました。
「この人と話すと承認欲求を得られる場合もある」と理解してもらえたようで、苦手な人の態度も少し軟化しました。

③ 他人の悪口や納得いかない話題にはうなずかない、無理に相槌を打たない

例えば、「他人の悪口ばかりいう同僚」の場合、「うなずく」「無理に相槌を打つ」といった同調する姿勢を決して見せないようにしましょう。その苦手な同僚に仲間意識を持たれてしまい、ますます接触時間が長くなります。同調姿勢を見せないよう、悪口については無反応にしていると、話が短くなり、「他人の悪口には乗ってこない人」と認識してくれるようになるでしょう。

④ その人のバックグラウンドに目を向ける

例えば、「服薬指導を全く聞かない、急げとしか言わない患者さん」の場合は、その人の周囲に目を向けて見ましょう。「ご家族の介護で忙しくて、気が立っているのかもしれない」「付き添いのご家族は感じが良いので、今は虫の居所が悪いだけかもしれない」といった風に、少し引いて、その人の周囲に目を向けましょう。そうすることで、こちらも少し冷静になることができます。

⑤ その人がいない時でも、その人の事を考えてしまうのをやめる・忘れる

あまりに苦手な人との関係が辛くなると、「その人がいない時にも、お休みの時や家に帰っても、その人の事を常に考えてしまう」という状態に陥る事があります。
職場で対している時も辛いのに、その人がいない時にも考えてしまうと、四六時中、苦手な人に支配されているといえます。これは大変辛いですし、さらに苦手意識や敵対心を強くしてしまいます。繰り返し苦手な人を思い返してしまうのは、自分をさらに苦しめる無駄な時間だと意識しましょう。「考えても無駄だし、忘れてしまうことこそ自分のためだ」と自覚しましょう。
そして、好きなことに没頭する時間を持つ、仕事とはかけ離れた場所に行って気分転換をするといったことも効果的です。それでも、つい考えてしまった時は「嫌な事は忘れよう」と強くイメージしましょう。一説によると、積極的に忘れようと意識する事こそが嫌な記憶の固定化を防ぐといわれているそうです。
5つの実践的アプローチをお伝えしましたが、他にも人数が比較的多い職場であれば、「適度な距離感を保つ」「周囲の人を味方につける」といった対応も望ましいかと思います。
しかし、人数の少ない調剤薬局であれば「そうしたくてもできない状況」で苦しんでおられる方も多いかと思います。
そして、様々な実践的アプローチをしてみても、正直に言って、関係改善が難しい職場もあると思います。その時は、環境を変える「転職」も選択肢の一つと考えても良いと思います。
今の職場で人間関係を改善することが、自分の職業人生にとって本当にプラスになるのか、少し考えてみても良いのではないでしょうか。