【薬剤師版】苦手な人との付き合い方/解決策その① 心理的アプローチ
ご相談の際、「服薬指導をしても聞いてもらえない、時には暴言を吐かれる」といった困った患者さんについて、薬剤師さんからお悩みをお聞きすることがあります。
また、多くの薬剤師さんから、「挨拶しても返事がない」「重要な伝達をわざと教えてくれない」「上司から理不尽な注意をされ、納得がいかない」といった、職場でのお悩みもお聞きします。
毎日のお仕事の中で、多くの薬剤師さんが「苦手な人」に悩んでおられます。
「苦手な人」とどう付き合えばよいか。これらのお悩みが解消され、接客時でも薬局・職場内でも毎日もっと気分よく過ごせるよう、解決策をお伝えします。
■苦手意識とは何か?
「無視される・きつい物言いをされる・意思疎通がうまくいかない」等々、苦手な人にまつわるお悩みは本当に様々です。
しかし、結局のところ、苦手意識とは「相手の対応や反応を『嫌だ、苦手だ』と受け取った側、自分自身の感情が引き起こした意識である」といえます。
「なぜ苦手に思うのか」その理由を明らかにしてから、「苦手な人との付き合い方」に関する心理的アプローチをとる必要があります。
■心理的アプローチ前の心構え:『相手は変わらないが、自分の捉え方・考え方は変えられる』
例えば、あなたの苦手な人に「挨拶を無視しないで下さい」・「きつい物言いをやめてほしい」と伝えたとします。聞き入れて、嫌な行為をすぐにやめてくれるでしょうか?
たとえ、どんなに正論を伝えても、なかなか聞き入れてくれそうにないと思いませんか。
苦手な人を変えることは、こちらの言い分が正しくても、非常に難しい。そうであれば、相手に対する自分の捉え方・考え方を変えた方が容易いといえます。
① 「その人を苦手・嫌いなままでも構わない」と認め、自己嫌悪に陥らない
道徳として、幼少から「万人と仲良くすべきである」と心に深く刻まれています。
その影響で「その人を嫌いになる自分がいけないのだ」と自分の感情を否定して、決して自分の気持ちを押し殺さないようにしましょう。
なぜなら、苦手・嫌いである理由を究明せず、その人を無理に好きになろうとしても、やはり受け入れられない自分に対して「自己嫌悪」に陥ってしまうからです。
自己嫌悪になると、職場における人付き合いそのものが嫌になり、さらに辛くなります。
まずは「社会で人間関係を築くにあたって、何人か苦手な人がいる状態は当たり前」と考えて、自己嫌悪に陥らずに「その人を苦手・嫌いなままでも構わない」と認めましょう。
② その人の「何が苦手なのか」、嫌いな理由を客観視する
例えば、嫌いな理由を以下の3種類に分類します。
1)外見(服装、印象、表情など)
2)言動(立ち居振る舞い、自分への接し方、相手から言われたことなど)
3)考え方や価値観(仕事のスタンス、方向性、良し悪しの判断基準など)
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」といいますが、人は一度嫌いになるとその理由を考えず、その人の存在全てを受け入れられないと決めつけてしまいがちです。
どこが嫌いなのか、客観的に見ることができれば、その人自身への苦手意識は小さくなります。
例えば「自慢話ばかりする言動」が苦手な理由であれば、「仕事自体には支障ない」と考え、「仕事上のつきあい」として割り切って付き合えば、苦手意識も薄まっていきます。
③ 苦手な人の良いところを見つける
筆者の体験ですが、「他人の悪口をいう言動」が理由で苦手な人がいましたが、接客の場では相手の変化に良く気づき、コミュニケーションをとるのが上手といった長所に気づきました。「人の変化に気づく」「他人の事をよく見ている」といった点は、仕事の場には役立っているのかと考え、苦手意識を少しずつ和らげることができました。
どんな人でも良いところがあるはず。見つけるのが難しければ、患者さんや他の人との関係も注意深く観察してみましょう。苦手な人の全てを拒絶するよりも、良いところを認めれば、苦手意識が少しずつ小さくなります。
④ 苦手な人の深層心理を考える
例えば、「こちらを貶めるような非難や嫌味を言う」といった「攻撃的な意地悪をする人」の悩みもよくお聞きします。どうしてそんな行動をするのでしょうか。
心理学では、「引き下げの心理―相手の価値を引き下げることにより、自分の価値を同等にしようとする心理」が影響していると考えられています。
自分よりも周囲から相手が評価されていると思うと、「相手を貶める非難や嫌味を言う」といった意地悪をする。これは、自分に自信を持っていないため、相手を貶めることによって自分の劣等感情を解消したいという心理からの行動といわれています。
よって、このような意地悪をする人は、劣等感が非常に強く、成長過程や現状況において十分な承認欲求を得られなかった人といえます。
この引き下げの心理を思い出して、「心が満たされていなくて、こんな行動をしてしまうのだな」と考えられ、相手に対して寛容になれるのではないでしょうか。
次回は、薬剤師における接客時・職場・薬局内での「苦手な人との付き合い方」解決策その➁ 実践的アプローチをお伝えします。