【薬剤師のスメルハラスメント対策/体臭予防】
近年、社会問題として大きく取り上げられている「スメルハラスメント(スメハラ)」。「ハラスメントの一種であり、悪意の有無に限らず、においにより周囲を不快にすること」を意味します。厄介なのは、本人が気付かないうちに不快感を与えてしまい、相手の気分を害してしまいがちということです。
職場のスメルハラスメントに関する調査(25~49歳の働く男女、男性525名・女性503名からなる1,028名が対象、インターネットにより実施)では、「職場で嫌だと感じるにおいは、1位:体臭 64.9%・2位:口臭 59.3%」という結果が出ています。
自分のにおいは気づきにくいけれど、他人のにおいは終始気になり、不快になりやすいものです。
薬剤師の場合は、服薬指導の際、患者さんから「この薬剤師さん、白衣の柔軟剤のにおいがきつい」と思われて、不快感を持たれてしまう場合もあるかもしれません。
また、薬局といった狭い職場で、同僚と一緒に長い時間を過ごすこともありますから、スメハラだと思われないよう、予防に気を配る必要があります。知らぬ間に、スメルハラスメントの加害者になってしまわないよう、今回は一番気にされる体臭の原因と対策についてお伝えします。
■体臭とは何か、その原因は?
体臭とは「体から発散されるにおい、皮膚の汗腺・皮脂腺の分泌物から生ずる一種の臭気」とされています。体臭の原因は「汗」と思われがちですが、汗の成分は99%水分なので、汗自体ほとんどにおいはありません。嫌な臭いとなってしまう原因は、皮膚表面にいる雑菌が「汗と皮脂などが混ざったもの」を分解することによって臭いを発生させるからなのです。
すなわち、雑菌が分解する「汗と皮脂などが混ざったもの」を取り除けば、嫌な臭いは発生しないといえます。
気になる・気にされる体臭の種類と対策
① わき臭(硫黄臭・酢のような臭い・スパイスのような臭い・古い雑巾のような臭いとも)
皮膚常在菌が脇汗に含まれる皮脂や老廃物を分解するときに生じる悪臭物質が原因とのこと。まずは、市販のデオドラント商品や制汗剤を適度に使用して、予防しましょう。
② 加齢臭(中高年特有の臭い・油臭い、ろうや古本、チーズのような臭いとも)
男女問わず40歳を過ぎた頃から増える「ノネナール」という臭い物質が原因で、主に上半身から臭いやすいと言われています。加齢臭対策の石鹸等で体を洗う、皮脂や汗をこまめにケアしましょう。
③ 疲労臭(ツンとした臭い)
疲労が蓄積したときに出るアンモニアが原因となった体臭で、「過労気味・ストレス過多・肥満気味・便秘気味・お酒の飲み過ぎ」といったときに発生しやすいそうです。疲労臭を防ぐには、とにかく疲れやストレスをためないことが大切です。
④ ダイエット臭(独特な甘酸っぱいような臭い)
食事制限だけで痩せようとすると、体内にケトン体という臭い物質が発生してしまいます。
ケトン体は運動によって消費できるので、ダイエット中は適度な運動をとり入れましょう。
⑤ ミドル脂臭(30~40歳代男性特有の臭い・使い古した油のような臭いとも)
汗に含まれる「ジアセチル」が原因成分であり、主に後頭部や頭頂部、うなじを中心に発生するそう。男性は自覚しにくい一方、女性は気付きやすく、しかも不快に感じるという特徴があります。後頭部・頭頂部・うなじをシャンプーでしっかり洗って清潔にする。または、ミドル脂臭予防効果がある「カンゾウ抽出末」「ケイ皮エキス」「グリチルリチン酸」を含むシャンプーを選ぶとよいそうです。
⑥ 香水・化粧品・消臭剤等と体臭が混ざった匂い
個人の好み・嗅覚の違いにもよりますが、不快な臭いと感じた場合には大変嫌われますし、職場同僚は仕事に集中できず、支障が出る場合もあります。また、患者さんには、においに敏感になっている方もおられるので、なるべく無香のものを使用する等対策しましょう。
■日頃の体臭予防策
① 入浴時、汗をかきやすい場所を丁寧に洗う
毎日の入浴において、脇の下、バストの間、ひざの裏側、足の指の間など、汗をかきやすい場所は丁寧に洗いましょう。髪の毛だけでなく、汗腺が多い頭皮もしっかり汚れを落としましょう。
② 汗をかいたらこまめにふく
汗をかいたままにすると、雑菌や皮脂が一緒になり臭気を発してしまいます。汗をかきやすい方は、汗とりパッドの使用もお勧めです。こまめに取り替えれば、臭いを抑える効果があります。
③ 汗をかく前に制汗剤を使用する
制汗剤は外出前など汗をかく前に使いましょう。汗をかいてから使う場合は、ボディシートなどで汗をしっかり拭きとってから使用すると効果的です。